空気イスで月見 趣味ブログ

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ミュージカル薄桜鬼土方篇 「冷厳な瞳」の美しさ

タイトル通り。

私はこれで盆の味を覚えた。

この曲が流れ、盆が回り続ける場面の美しさは半端じゃない。歌も、芝居も、装置も、効果も。

薄ミュは一曲で一場面作るよりも場面と場面の間を曲で繋ぐことがけっこうあるんじゃないかと思うけど(他のミュージカルと比較したわけではないです。主観。)ここの転換の美しさはもうものすごい。オープニングは「道標」、すぐに「ヤイサ」で畳み掛け、この「冷厳な瞳」でストーリーが動き出して本当の意味で土方篇が始まるんだと思う。

歌詞の内容は原作だと千鶴のモノローグで、土方歳三のこれまた美しいスチルが映る場面。土方歳三の気迫を千鶴が感じとり圧倒され動けなくなる場面。無粋な言い方をすれば一目惚れする場面なんですよ。原作をやった人なら印象に残っている場面ではなかろうか。

その千鶴が感じたことを土方が歌ってしまうというミュージカル表現。素晴らしすぎる。土方という男がどんな男なのか。ゲーム媒体ならヒロインのフィルターを通すのがいいだろう。でもミュージカルなら、土方自身が歌で表現できてしまう。圧倒される。おれたちが千鶴(ある意味それはそう)。

月のように光る照明!!薄暗い淡く紫がかった空気!

そして回る盆!!!!!!千鶴を囲む土方沖田斎藤!!!

盆が回ってる最中は左右手前奥が入れ替わって分からなくなるじゃないですか、そこを千鶴がふらふらと、逃げようと、右往左往する、するんだけど沖田斎藤が行手を阻むから逃げられない。迷い込んでいく。これがここからの千鶴の運命を暗示しているように思えて。沖田斎藤は実はそこまで動いていなくて、千鶴が動いてるから2人にぶつかってしまうんだよね。このドツボに嵌っていく感じ。でも最後は(追い立てられてるけど)自分の足で屯所に入る。うーんこの。ただの場面転換では終わらせない。すごい。

千鶴に刀を突きつける土方。でも本当に彼が「問いかけ」ているのは自分に対して。ラストで千鶴が言うには「桜は、土方さんに似ています。」と。もう歌詞を見てもらうしかないんだけど、土方自身が、桜と自分の境遇を重ねて歌い上げ、舞台上では千鶴を尋問しているように見えても、実は自分に、自分が今やっていることは、やるべきことは何か、と問い質してる。この厳しさ。ストイックさ。彼は不穏因子を前にめちゃくちゃ冷静で頑としている。純粋にかっこいい。

千鶴と土方の関係を考えていると本当に楽しい。最初、千鶴は土方のことを恐い人だと思ってもいて、それは少女マンガにありがちな第一印象は最悪!(顔をしかめる)みたいなベタ要素も踏まえているのが乙女ゲームとして上手いと思う。切っ先突きつけて引き回すような男だもんな。でも千鶴は土方の厳しすぎる美しさを感じているし、ただでいる女ではなく振り切って逃げようとする女なので。土方の理想を支えているがそこにはちゃんと我がある。ちなみに私は土方√の江戸女な千鶴が1番好きです。

全部盆に載せて回すことで土方歳三の人格、美しさ、運命、が『薄桜鬼』でとても大切な桜と月に象徴されて昇華されていると思います。色々なことが起きている場面。ため息が出るほど美しい。

舞台だとどうしても遠目で見ることになるのに、スチルのアップの土方の「瞳」を歌と仕草で表現したのがすごいなと何回観ても思う。矢崎広さんはマジで歌が上手い。凄すぎる。黒髪と隊服姿が美しい。矢崎さんの2次元を3次元にする力は凄かった。大好きな役者さん。早く生の舞台で観たい。