空気イスで月見 趣味ブログ

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森の奥に向かったつもりが血染めの世界だった 2代目『BLOODY SHADOWS』東京公演感想

薄々分かってはいたけどこんなにこんなだとは聞いてないよ!!!

ですがまず、今回の公演開催を決定し、対策を固めこれまで運営を進めてくださっているスタッフの方々、そして毎度のことながら大変な重圧と物量の中出演してくださったキャストの方々に感謝申し上げたいです。このような状況の中公演を行うという判断は難しいことが多々あったかと思います。「いま」「ここで」「これを」観られたことの奇跡を噛み締めております。これから先の公演も無事に終えられますように、ただの一ファンではありますが祈っております。

 

注意書き

筆者は

2代目劇団シャイニング全肯定

若手俳優さんについてはあまり知識がない

人より少し舞台が好きだけどずぶの素人

ゲーム本編プレイ済みのうたプリファン

美風担

です。以上をご理解いただいた上、読み進めてください。また、筆者が参加した11月6日昼公演の内容・状況に基づいた感想や考察がありますが、正確な情報である保証は全くできません。

以下大いにネタバレを含みます。

 

とんでもないものを観た。ありきたりな言葉かもしれないが。

吸血鬼を題材にした美しい世界観のダークファンタジーだと各所で宣伝されていたし、シアターシャイニング『BLOODY SHADOWS』(初代と呼ぶことにします)は「薔薇」「月」が印象的な作品で、今回もカンストした美と悲哀が観られることを何となく思い描いて劇場に向かいましたが、まさか

人間性に挑戦してくるとは思わなかった

まあよくよく考えれば原作うたプリもアイドルたちがなかなか理不尽な目にあったり四苦八苦したり、足掻いたり、その他シリーズでもうたプリはそれなりに重いテーマをいままで扱ってきていましたね。これもまたうたプリ

えっでもここまですると思わないじゃん………観劇後に目の前に伸びるのはひたすら地獄へと続く長い長い道のりなんですけど………?

 

劇場に入った途端森へと誘われる。薄暗い照明、豪華なセットで表現された森林、階段、浮かび上がる"BLOODY SHADOWS"の文字、バロック調の音楽。これが吸血鬼たちのいる森……!

開演前アナウンスでびっくり!アイレスの声と話し方がめちゃくちゃ初代に寄せられている!すげぇ!普通に感動し慄いていると音楽のボリュームが下がって客電が落ちて幕が上がる!

 

始まったのは初代のラストシーンだった。繰り返し聴いて夢にまで観たあの場面が。そして開幕数分も経たず衝撃の事実が発覚した。マサフェリーをバンパイアにしたのはウォーレンだった。何となくアイレスがマサフェリーを噛んだのかと思っていたが違った。事実は想像を超えてきた。そして今回も結婚式のようなセリフ、演出だった。立ち位置から考えてもアイレスとウォーレンは司祭、マサフェリーの相手は何なのか、ウォーレンはマサフェリーを噛むから司祭とも取れるし、あるいは。初代でマサフェリーは、婚約者の身代わりになるため仲間になることを提案し、いやむしろ主張しアイレスに聞き入れられた。でもウォーレンはそもそも自分で婚約者を逃したくて、それは無理だと諦めマサフェリーに託そうとし、そのマサフェリーが自分の行く末も知らずバンパイアになるなどと言い出した。(どうでもいいが個人的に、レンくんが結末に納得していないと言っているのは自分ならなりふり構わず婚約者ちゃんを連れて逃げるのにということだ思っている。)これがじっとしていられるわけがないじゃん……。それでも彼は2人に押されてしまったわけで(たぶんレンくんはそこが納得いかなくて)。ウォーレンがマサフェリーの血を飲むのは、せめて自分の手で的な悲しい愛情も感じるけれど、吸血行為自体がそもそもエロティックだけど…そういうBL的な騒ぎ方だけじゃなく、ウォーレンが引きずるものの大きさに目がいって。人ならざるものが長い間でおそらく唯一心を許せた人間の魂を自分の手で引きずりこまなければならない。ホメロスとアイレスの関係は気に入った「から」仲間に引き入れよう!だったのに対してウォーレンは「けれど」「そうせねばならない」部分があるのが辛い。だけど「だから」の部分もある。彼は「人間とバンパイアが分かり合える道があると思うのなら自分で確かめてみろよ」というような若干投げやりな怒りも持っていそうで、三角関係に気がつかない鈍感さやバンパイアの未来を信じられる「幸せな」マサフェリーを誰よりも憎んで恨んでいて、でもそんな不器用で純粋な男だから付き合えたし、でもその男を汚すのは自分なんでしょ……。そりゃあマサフェリーに過保護気味にもなる、アイレスも嫉妬をする。人ならざるものだったとしても、こういうウォーレンの器用そうで不器用なところは人間だなぁと思うだけに、人間だった頃の回想がとても辛かった。そして今回ウォーレンを演じてらっしゃる高本さんがキュートな方なので余計辛い。頭痛がする辛さ。少年時代のお芝居がピュアでかわいくてかわいそうで、それをアイレスに語るバンパイアのウォーレンはかわいそうで、かわいいはかわいそう……。

もう途中の転換は色々アレなので勢いよく飛ばして結末に行く。真実を知った彼らが求めた人間性は、人間と吸血鬼が共存できる世界という当初の目的でも、人間に戻る術を探すということでもなかった。彼らはたとえ自分たち以外の吸血鬼を全員殺してでも自分たちが人間の側にいることが彼らの人間性になってしまったんだ。救いがなさすぎる。人間にも吸血鬼にも入れずただ人間の味方であることを示し続けることでしか、自我を保てない。それも残酷な手段で。キツ。最後、暗闇に消えていく3人を震えながら見ていた。そのままフツーに明るく楽しくかっこいいレビューが始まってびっくりした。レビューはめっちゃ楽しかったけどラストの衝撃が凄すぎて固まっていた。